【ログ解析編】Sysmon・auditd・Event Logを横断して攻撃を見抜く|CTF思考フレームワーク #45
こんにちは、アンペンです!
今回はフォレンジック4領域の最後、ログフォレンジックです。複数のサーバや端末・クラウドから集まったログをSIEMでまとめ、時系列で侵入の流れを組み立てる手法を整理します。
ログは事後調査の基盤であり、平時の転送・保管が9割を決める領域です。

ログって、サーバごとにバラバラに残ってるよね?どうやって突き合わせるの?

SIEM(Security Information & Event Management)に集めて『同じ時刻軸』で並べる。違うサーバの違うログでも、時刻を揃えれば1本の物語になるんだ。
フォレンジック4領域も、今回のログでいよいよ最後。前の3つ(ディスク・メモリ・ネット)が“1か所を深く掘る”作業だったのに対し、ログは“バラバラの記録を1本につなぐ”のが仕事です。Webサーバ、認証サーバ、クラウド……それぞれが自分の見た範囲しか知りません。その断片を集めて時系列に並べると、攻撃の全体像が物語のように立ち上がる。今日はそのまとめ役、SIEMを見ていきます。
ログフォレンジックは『複数ログを同じ時刻軸で並べる』作業です。OS・アプリ・EDR・クラウド監査ログをSIEMに集約し、攻撃の連鎖を可視化します。守りは平時のログ転送+改ざん防止+保管期間で決まります。
この記事で分かること
- 収集すべき主要ログソース
- SIEMの役割と代表ツール
- 侵入の物語を組み立てる『相関分析』
- 守る側の対策(転送・改ざん防止・保管)
📖 はじめてのWebセキュリティ #45|ログForensics編
SIEMで複数ログから時系列を組み立てる手法を扱います。 シリーズ一覧を見る →
⚠️ 大事なお約束
他者のシステムからログを無断で取得・分析することは、業務上の権限や法律に違反します。CTFや自分の検証環境のみで確認してください。
ログは『分散している証言』を集める作業
1つの攻撃でも、痕跡は色んな場所に残ります。Webサーバにはアクセスログ、DBサーバにはクエリログ、認証サーバにはログインログ、クラウドには監査ログ。これらを1つの時間軸でまとめないと、全体像は見えません。
なぜ、こんなにバラバラに残るのか。それは、各システムが“自分の担当範囲しか見ていない”から。Webサーバは『アクセスが来た』ことは知っていても、その後その人がDBで何をしたかは知りません。認証サーバは『ログインした』ことしか知らない。一人ひとりの“目撃者”は、事件の一部しか見ていないんです。だから、全員の証言を集めて突き合わせないと、真相は見えてこない。それがログ解析の出発点です。
図解:集めるべきログソースの全体像
各サーバ・端末・クラウドからログをSIEMへ転送し、1つの時刻軸で正規化します。これにより『どのサーバで・誰が・何をしたか』が連鎖して見えるようになります。
ここで地味だけど決定的に大事なのが『時刻を揃える』こと。各サーバの時計が少しずつズレていたら、証言の順番がぐちゃぐちゃになります。Aサーバの“10時00分”とBサーバの“10時00分”が、実は3分ずれていたら——攻撃の前後関係が逆転して見えてしまう。だから全サーバの時計をNTPでぴったり合わせておくのが、相関分析の大前提なんです。これは後の守りの話で、もう一度触れます。

1台のカメラだけでは犯人の足取りは分かりません。コンビニ・駅・交差点・住宅街の複数のカメラ映像を時刻順に並べて初めて、『どこから来てどこへ逃げたか』が見えます。SIEMもこの『複数カメラ集約システム』のITバージョンです。

ここで覚える用語:SIEM(シーム)
Security Information & Event Management の略。複数システムのログを集めて正規化・時刻同期・検索・相関分析を行う基盤です。代表ツールは Splunk / Elastic Security / Microsoft Sentinel / Sumo Logic / Wazuh(OSS) など。商用は高機能、OSSは無料という棲み分けです。
『SIEM』という言葉、難しそうですが、やっていることは“ログの司令塔”です。あちこちから届く、書式もバラバラなログを受け取り、①同じフォーマットに整え(正規化)、②時刻を揃え、③まとめて検索できるようにする。たとえるなら、各地から方言で届いた手紙を、全部標準語に直して時系列に綴じる編集者のような存在。これがあるかないかで、調査のスピードが何倍も変わります。
主要ログソースを覚えよう
最低限おさえる5カテゴリ
- OSログ:Windows Event Log(Security/System/PowerShell), Linux journal/syslog
- 認証ログ:AD・LDAP・SSO(Azure AD/Okta)・sshd
- アプリログ:Web Serverアクセスログ・DBクエリログ・APサーバログ
- EDR/EPPログ:プロセス作成・通信・ファイル操作の検知
- クラウド監査ログ:CloudTrail(AWS) / ActivityLog(Azure) / AuditLog(GCP)
WindowsならEvent ID 4624(ログオン成功)・4625(失敗)・4688(プロセス作成)・4104(PowerShellスクリプトブロック)あたりは頻出です。覚えておくと初動が早くなります。
ここで出てきた“4桁の数字”——4624や4688——は、Windowsの『出来事の通し番号』です。最初はとっつきにくいですが、よく出る数字をいくつか覚えておくと、調査が一気に速くなります。「4625(ログイン失敗)がずらっと並んで、最後に4624(成功)が1つ」——これだけで“パスワード総当たりが成功した”と読める。数字を“事件のサイン”として覚える。これがログ解析の上達の近道です。
『相関分析』で侵入の物語を組み立てる
SIEMの真価は相関分析(correlation)にあります。単一ログだけでは『普通のログオン』に見えても、複数ログを並べると怪しさが浮き彫りになります。
相関分析の典型例
- 22:30 海外IPから複数アカウントでログイン失敗(4625)
- 22:42 同IPから1アカウントでログオン成功(4624)
- 22:43 PowerShell起動(4104) + 外部への通信(EDR)
- 22:45 クラウド監査ログに新規IAMユーザー作成(CloudTrail)
これらを1本の時系列に並べると、ブルートフォース→侵入→足場拡大→永続化、という攻撃の流れがはっきり見えます。
ここがこの回のハイライト。さっきの一つ一つのログ、単体で見たら“どれも普通”ですよね。海外からのログイン失敗も、PowerShellの起動も、IAMユーザーの作成も、それぞれは日常的に起こりうる。でも、これらが“数分のうちに、同じ相手から、立て続けに”起きていたら?——その並びこそが、攻撃の動かぬ足跡です。点では無実に見える出来事が、線でつなぐと有罪になる。これが相関分析の力です。

練習は、小さなSIEM(Wazuhなど無料のものでOK)を自分のVMに立てて、複数のログを集めてみることです。SSHのログイン失敗を何回かわざと起こして、それがSIEMの画面に時系列で並ぶのを見る——「おお、つながった!」という体感が、相関分析の理解を一気に深めます。もちろん対象は自分のラボだけで。
CTFでやってみよう:自分のVMでログ集約を体験
小規模SIEMで複数ログを時系列に並べる
目的は『複数ログが1本の物語になる』を体感することです。
- 自分のVMにWazuh(OSS SIEM)やElastic Stackを構築
- Linux/Windows VMにエージェントを入れ、ログを転送
- SSHログイン失敗→成功 や、PowerShell実行 などのテスト操作を試す
- SIEMの検索画面で時刻順に並べ、操作の連鎖を確認
- 余裕があれば相関ルール(失敗5回→成功1回でアラート)を書いてみる
守りで意外と軽視されがちなのが、さっきも出た『時刻合わせ』です。会話で押さえましょう。

ログさえ全部集めておけば、あとから時系列に並べられるよね?

集めるのは大前提だけど、もう一つ“隠れた落とし穴”があるんだ。それが各サーバの時計のズレ。サーバごとに時刻が数分ずれていたら、せっかく集めたログを並べても、出来事の前後がデタラメになる。「成功が失敗より先に記録される」なんて矛盾が起きたら、もう物語は読めない。だからNTPで全サーバの時計をきっちり合わせておくことが、地味だけど決定的に重要。あと、攻撃者はログを消すから、生まれた瞬間に外へ転送しておくのも忘れずに。集める・揃える・守る、の3点セットだよ。
守る側の対策:『転送・改ざん防止・保管』
攻撃者はログを消すのが定石です。守る側は『現場のログだけに頼らない』設計にしておきます。
- ログを即時に外部へ転送(Syslog/Beats/Fluentd等)
- 転送先は書き換え不可ストレージ(Immutable/S3 Object Lock等)に
- クラウド監査ログ(CloudTrail等)は必ず有効化+別アカウントへ集約
- 保管期間は1年以上を推奨(高度攻撃は発見が遅れる)
- NTP/時刻同期を厳密に(時系列がズレると相関できない)
- 定期的にログの取りこぼし(欠損・転送停止)をアラート化

『現場のログ』だけじゃ消されちゃうから、先に外に出すんだね。

そう。これで4領域編は完結。次回からはフォレンジック応用編。ステガノグラフィー(画像に情報を隠す技術)から入っていくよ。
ここまでをひと言で言うと、ログ解析は『集めて・揃えて・物語にする』。あちこちに散った証言をSIEMに集め、時刻を揃え、相関で1本の流れにする。そして、その証言が消されないよう、生まれた瞬間に外へ逃がしておく。フォレンジック4領域の締めくくりにふさわしい、“全体をつなぐ”技術です。
まとめ:『集めて・揃えて・物語にする』
- ログは複数ソースを同じ時刻軸で並べるのが基本
- OS・認証・アプリ・EDR・クラウドの5カテゴリは最低でも収集
- SIEMの真価は相関分析。1本の物語に変える
- 守りは即時転送+改ざん防止+時刻同期+保管期間
今日の持ち帰りは『点を集め、時間で結べば、線になる』です。1台のログ、1つのイベントだけでは、攻撃はなかなか見えません。でも、バラバラの証言を同じ時間軸に並べた瞬間、無実に見えた点々が、くっきりとした攻撃の線に変わります。集める・時刻を揃える・改ざんさせない——この3つが、ログという“最後の証人”を守り抜くコツです。
次回からはフォレンジック応用編。まずはステガノグラフィー、ファイルや画像に情報を隠す技術を扱います。
